アルコール依存症治療の専門病棟を持つ東京都町田市の精神科専門病院

医療法人社団 正心会 よしの病院
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Q&A ~ギャンブル依存症 12の質問~

Q1 ギャンブル依存とはどんな病態ですか?
ギャンブルをやめたくてもやめられない状態です。ギャンブルをしたい欲求とギャンブルを止めたい欲求が,綱引きのようにせめぎ合っているからです。このためギャンブルを続けようが止めようが常に後悔を伴います。

診断基準
DSM-5によるギャンブル障害の診断基準

A.以下のうち12か月以内に4つ(またはそれ以上)により示される持続的反復的な不適応的賭博行為
⑴ 興奮を得たいがために,掛金を増やしたい欲求(耐性)
⑵ 賭博回数を減らしたり,止めたりすると落ち着かなくなる(離脱)
⑶ 賭博を減らす,やめるなどの努力を繰り返したが,成功しなかったことがある(コントロール障害)
⑷ 賭博にとらわれている(強迫的欲求)
⑸ 問題からの逃避手段として,または不快な気分の解消手段として賭博をする(不快感情回避)
⑹ 賭博による損失金を別の日に賭博をして取り戻そうとする(負け追い)
⑺ 賭博へののめり込み(借金の事実など)を隠すため,嘘をつく(嘘/罪悪感)
⑻ 賭博のため,重要な人間関係や社会参加の機会を危険に陥らせたり,失ったりした(社会機能障害)
⑼ 賭博による破産の危機を逃れるために,尚も借金をしようとする(経済的破綻)
B.これらの賭博行為は,躁病エピソード(だけ)ではうまく説明されない。
【重症度評価】 軽度:4~5 中等度:6~7 重度:8~9
文献1)より作成(一部追加略:著者訳)
Q2 ギャンブル依存はなぜ起こるのでしょうか?
ギャンブルに限定した自己制御能力の低下の原因については未解明です。それゆえ医療的(医学・認知心理学・力動心理学等)および非医療的(社会学・道徳・宗教等)視点から,それぞれの説明モデルが提起されています。
Q3 ギャンブル依存の患者にはどんな背景がありますか?
ギャンブルが可能な環境であれば,だれでもギャンブル依存になりえます。ただし,家庭内や地域において強力なギャンブル文化に曝露された場合,成人後にギャンブルへの依存を強めやすい傾向があります。
Q4 ギャンブル依存の何が問題なのでしょうか?
繰り返す債務による経済的な破たんが主たる問題です。加えて,金銭に関する嘘,それについての家族間のトラブルは必発です。また就労能力の低下や欠勤,時に横領などの社会的問題を生じます。

心理的身体的問題
 債務に関する不安や緊張感が持続することで,動悸やパニックなどの神経症症状を伴う。さらに,遁走や一過性健忘などの解離反応がみられることもある。
 仕事と睡眠とギャンブルのみの単調な生活パターンとなる。そのため虚無感,さらには絶望感が出没する。また他者との交流が激減し,孤立傾向となり,最終的に二次性うつ病に至る。
 ダブルワークなどの過重労働や運動不足が高血圧等の生活習慣病の悪化をもたらす。
これらの結果,自殺のリスクが高まっている。
Q5 国内外ではどれくらいの患者がいるのでしょうか?
調査対象期間が過去1年に限定された場合では0.5~1.9%,生涯では0.2~2.4%程度の有病率が諸外国において報告されています。一方,わが国では1年有病率は0.8%ですが,生涯有病率が3.6%と,比較的高い数字が報告されています。(2017年 全国住民調査)

各国の有病率
 South Oaks Gambling Screen(SOGS)を用いた場合13),生涯有病率の高い国としては,わが国を筆頭に,オランダ(1.9%),アメリカ(1.9%)などがある。低い国としては,ドイツ(0.2%),スウェーデン(0.6%),イギリス(0.8%)などがある。

1年有病率の重要性
 1年間を越えてギャンブル依存が持続する率は3割程度に過ぎない。同様にギャンブル依存は約4割程度の高い自然寛解率をもつ。このようにギャンブル依存は流動性の高い状態像である。 したがって,生涯を調査対象期間とするよりも,過去1年間を対象としたほうがより実態を反映している。
Q6 受診に結びつけるための対策は?
ギャンブルに対して否定的な態度をしてはいけません。まずは断ギャンブルを押しつけることなく,「楽しいギャンブルに戻るにはどうすればいいのか」というかかわりから始めます。そしてギャンブルで満たしていた欲望を別の方法でも満たすよう援助します。

ギャンブラーとしてのプライドへの配慮
 まず,ギャンブル能力(勝負勘や合理的思考能力)そのものを喪失したわけではないことを保証することが重要である。つまり,ギャンブラーとしての矜持に最大限の配慮を行う。この自己価値観こそが現状変革に向けた回復の原動力である。

ギャンブル目的の相対化
 まず,「金を増やすため」(金銭欲)という理由づけをゆさぶることで抑圧されている他の欲望の意識化を促す。「本当にお金を増やしたいのですか?」「ギャンブルを楽しめていましたか?」あるいは「本当は何を欲しているのですか?」などと尋ねる。その結果,「勝利感を味わうこと」「現実逃避すること」などの金銭欲以外の欲望が自覚される。このようなギャンブルに対する複数の矛盾した欲望の自覚によって,ギャンブルから自分自身に視点が移る。

代替行動への誘い
 不充足感を挻(てこ)に,「本来の欲望を満たすことを目的に,ギャンブルに代わる行動を試みましょう」と気軽に誘うのがコツである。そして,複数の代替行動を継続することによって,多くの場合は結果として断ギャンブルに至る。
Q7 診断のポイントは?
操作診断はDSM-5を利用します。一方,レジャーギャンブラーおよび職業ギャンブラーとの鑑別が重要です。欲求の両価性とその結果としての負け追い行動を本人と相互確認することがポイントです。

職業ギャンブラーとレジャーギャンブラーの鑑別
①職業(プロフェッショナル)ギャンブラー
 大部分のギャンブラーは「金が増えることがギャンブルの魅力である」と述べる。ただ「増える魅力」には2つの意味がある。1つは字義どおりの「金が金を産み出す魅力」(金銭欲)である。
 金銭欲が一貫してギャンブル動機の中心を占めている場合は,職業ギャンブラーと診断する。時にこの欲望に則しているにもかかわらず,大きな損失などの問題を繰り返す場合がある。これは職業適性の問題であり,必要があれば職業カウンセリングとして介入する。

②レジャー(レクレーショナル)ギャンブラー
 「金が増える魅力」には「増える過程で得られるさまざまな興奮」も含まれる。興奮の内容としては達成感や優越感(名誉欲),非現実感や変容感(現実逃避欲)および緊迫感や危機感(被虐欲)などがある。
 大部分のギャンブラーは金銭欲以外の欲望充足を主たる動機としたレジャーギャンブラーである。
 そして多くの場合,時間の経過とともに新鮮味が減じ,興奮が減弱する。その結果,ギャンブル欲求が相対的に減弱する。そのため別種のギャンブルへの切り替え,もしくはギャンブル以外のレジャーへの移行を開始する。

③ギャンブル依存者
 ギャンブル欲求が減弱しない一部のギャンブラーが存在する。そのため「損失を回避するために同種のギャンブルを継続する」という矛盾した(両価的)行動を開始する。この「損失回避」への執着と「負け追い」行動がギャンブル依存の中核症状である。
 以上のように,臨床的に有意な診断のためには,一定数以上の所見(量的評価)と両価性(質的評価)との両者の確認が重要である。
Q8 治療はどのように進めますか?
現在ギャンブル欲求抑制剤等の適応薬物はありません。また,集団療法が利用可能な施設はごくわずかです。したがって,外来治療ではギャンブルに代わる活動を探すこととその実践を応援することが主たる対処になります。一方,入院治療では内省を深めることと作業療法の2点が主になります。
Q9 治療中に気をつけなければならないことは?
重症化因子の有無とその程度を評価することが重要です。ギャンブルの問題にのみとらわれると,重症化因子への対処がおろそかになります。反対に重症化因子がない場合は自然寛解可能性が高いので,過剰治療にならないようにします。
Q10 治療の完了はどうやって判断するのでしょうか?
代替活動が十分身につくことが最終目標です。過去の失敗を反省あるいは我慢して止めている状態ではまだ不十分です。「ばからしいのでやめた」という実感が生じればまず大丈夫です。

治療終結に向けた工夫
 治療維持期の主要なテーマは,「ギャンブル以外の楽しいことの発見と実行」である。そして1つみつけるたびに,最大限の支持を行う。
 仮に新たな発見がなくても,「食後の寛ぎ」や入浴,あるいは単純作業(皿洗いや草取り)などのささいな日常行動に潜む達成感や現実逃避的効果の意識化を促す。
 もしギャンブルをした場合,不利益な点よりも充足した点をより強調する。そのうえで,より満足度の高い,すなわち支払った対価に見合った他の充足行為もすすめる。
 ギャンブル自体の多寡を正面からテーマとしないことが重要である。それは両価的欲求を強化するからである。もし減らせたり止めたりできるようになっていれば,その幸運をともに喜び合えばよい。
Q11 専門施設ではどのような治療を行うのですか?
多くの施設では認知行動療法による体系立った認知の修正と集団精神療法を行っています。また,集団力動や内観療法を利用した内省を行っている施設もあります。

 各専門施設ではそれぞれ独自の取り組みを行っているが,技法としてはほとんどの施設が集団療法を導入している。内容としては多くの場合,疾患説明等の患者教育とお互いの再発や回復体験の共有である。
Q12 医療以外にはどんなサポートが必要でしょうか?
法的問題,とくに債務の対応が重要です。そのために司法書士等の法律家に相談することを勧めます。多重債務についての基本方針は少額・長期返済(少なく長く)です。

治療的な返済戦略
 債務に対する対処はギャンブル依存の回復にとって肝である。可能ならば法的サポートを依頼する前に,治療的な返済戦略を共有しておく。
 一般的には「できるだけ早く返済する」「返済の苦労が再発の歯止めになる」と考えられている。加えて,依存症者本人や家族は急いで返済しようとする傾向がある。実際は苦労して返済することと回復は直接関連しないばかりか,返済終了後に再度債務を繰り返す例が多い。
返済の戦略は,「無理せず余裕をもって細く長く返済すること」に尽きる。その戦略に基づく債権者との交渉のためには法律家のサポートは欠かせない。

自然寛解率の高い障害ですから,精神科併存症がない場合,治療の完了以降のフォローアップは不要です。ただ,発達障害や精神発達遅滞の併存例の場合は社会適応訓練を十分に行う必要があります。

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