100人に1人が統合失調症にかかるといわれており、比較的頻度の高い疾患です。以下にあげられるような「陽性症状」と呼ばれる症状が、少なくとも一ヶ月以上続くことによって診断されます。

統合失調症

1. 統合失調症とは

100人に1人が統合失調症にかかるといわれており、比較的頻度の高い疾患です。以下にあげられるような「陽性症状」と呼ばれる症状が、少なくとも一ヶ月以上続くことによって診断されます。

陽性症状

・幻覚
誰も周りに人がいないのに声が聞こえてくる、など、実際にはないものをリアルに感じる
・妄想
部屋に盗聴器を仕掛けられている、など、現実にはないことを強く確診する
・思考障害
考えや話す内容にまとまりがなくなる

こうした症状をこうり返すうちに、以下にあげられたような症状が進行していきます。

陰性症状

・感情の平板化(感情鈍麻)
 喜怒哀楽等の感情の表現が乏しくなり、他者の感情表現に共感することが少なくなる。
・思考の貧困
 抽象的な表現や複雑な思考が出来なくなる。
・意欲の低下
 自発的に何かを行おうとする意欲がなくなってくる。
・無為自閉
 家や部屋の中にこもりがちになり、外界とのコミュニケーションをとろうとしなくなる。

認知機能障害

・感情の平板化(感情鈍麻)
・記憶力の低下
・注意・集中力の低下
・判断力の低下

2. 経過

統合失調症の経過は、前駆期、急性期、消耗期、回復期に分けられます。それぞれの病期において、以下のような症状が見られます。

  • 前駆期:眠れない、音に敏感になり、気持ちが焦る、気分が変りやすくなる
  • 急性期:不安になりやすい、眠れない、幻聴、妄想
  • 消耗期(休息期):眠気が強い、体がだるい、やる気が出ない、憂うつな気分
  • 回復期:ゆとりが出てくる、周囲に関心を持てるようになる

より早い段階で治療を始めたほうが回復も早く、症状も軽くて済むようになります。上記に該当するような症状が出てきたら、まずは専門医に相談してみましょう。

3. 治療

  • 薬物療法
    抗精神病薬と呼ばれる、脳の興奮を抑えるような薬を使います。統合失調症では、脳内でドパミンが過剰に活動することで幻覚・妄想といった陽性症状が出現するとされており、抗精神病薬はこのドパミンの働きを抑えることで陽性症状を改善させると考えられています。なお、ドパミンの働きを抑えることで、パーキンソン病に似たような症状が副作用として出現することがあります。そのような場合は、抗精神病薬の量を減量したり、他の種類の抗精神病薬に変えたり、そのような副作用を抑えるような薬を追加したりして対応します。また、抗精神病薬の副作用として、便秘はよく起こる症状であり、そのような場合には下剤が併用されます。気になる副作用が出てきたら、自己判断で抗精神病薬を飲むのをやめるのではなく、まずは主治医に相談して、薬の調整について相談するようにしてください。
  • 作業療法
    作業療法士の指導のもと、手工芸、パソコン、ヨガ、音楽、書道などに取り組み、集中力、思考力、体力の回復や、楽しみ、達成感、充実感といった感情の回復に努める、こころのリハビリテーションです。
  • 心理教育
    病期の症状や経過、悪化・再発をしやすくする要因、再発予防策、治療法、再発予防に有益な知識などについて正しい知識を学ぶ中で、病気を受け入れ、病気に対する理解を深め、病気と向き合いながら前向きに生きていくことが出来るようになっていきます。

4. 再発について

統合失調症は再発しやすい病気です。いったん症状が落ち着いて、「治った」ように感じて、内服を中断してしまうと、の再発のリスクが高くなります。再発を繰り返すことで、陰性症状や認知機能障害が進行し、社会的な機能が低下して、就労が困難になったり、薬が効きづらくなり、回復にかかる時間が長くなったりしていきます。自己判断での内服中断や減量はせず、必ず主治医と相談しながら調整するようにしてください。